BVEの車両パラメータの解説をしているサイトや文献があまりないため、こちらに記させていただきたいと思います。独自研究が一部含まれているので正確性に欠けるかもしれません。ある程度の電車の知識は必要になりますが、何かの参考になればと思います。できるだけ簡単に記述しているつもりです。
このセクションでは、車両重量や編成両数、長さなどを設定します。すべての物理演算に関わってくる項目になりますのでかなり重要です。
このパラメータはモーターがついている車両とついていない車両の車両数をそれぞれ入力します。
よく鉄道ファンの間では、電動車と付随車の比率を◯M◯Tなどの表現がされることが多いですが、そのままこれを入力できると考えて差し支えないでしょう。
気動車で編成を組成する場合は全車両が動力付きの場合が多いので、TrailerCountは0にしましょう。
また、阪神ジェットカーなどの全車電動車編成でもTrailerCountは0にしましょう。
貨物列車を再現したい場合は逆に、MotorCarCountは1でTrailerCarCountが10などになるかもしれません。
ただし0.5M車などの編成の片方台車にモーターがある場合は少し頭をひねる必要があります。
このパラメータがBVEの中でどのように影響するのかは以下が上げられます。
電車の加速度や減速度全般
車体の動揺などの物理シュミレーション全般の挙動
Q.0.5M車ならどうすればいいのか?
A.実質的なMT比率を考えましょう。
例えばJR西日本321系を考えてみます。321系の組成は
クモハ+モハ+モハ+モハ+サハ+モハ+クモハ
となっています。編成全台車の数が2×7で14台車あり、モハの車両は0.5Mで6両存在しますから、0.5×6で3で実質3M 余った分が実質T車なので4T
という感じに考えます。
なぜこういう感じに考える必要があるかというと、こちらのほうが簡単に性能を制作することができるからです。ノッチ曲線等の資料では編成全体の加速度も吟味して実質的なMT比で考えられていることが多いです。6M1Tで制作して表計算ソフトで調整するよりもこちらのほうが簡単に作ることができます。
また、遅れ込め制御など電空協調制御のときに正確な挙動を再現するためにもこうしたほうがよりリアルな挙動に近づけることができます。
0.75Mなども同一に考えることができます
余談ですが、このパラメータは小数点を受け付けるので、例えば2M2Tの電車で微妙に加速度や減速度を調整したい場合
MotorCarCount = 2
TrailerCount = 2
を加速度を高くしたり電気ブレーキの効きを強くしたい場合、以下のように書き換えると車両性能テーブル無しで変更することができます。
MotorCarCount = 2.3
TrailerCount = 1.7
あまりオススメはしませんが簡易的に変更したい場合はこのような調整もありといえばありだと思います。
F=maとこの説明ではよく書いていますが、これは高校物理で習うニュートンの運動法則のことを言っていて、電車の加速度もこれに則って計算することができます。詳しい内容は他に説明しているサイトがたくさんありますのでそちらを参考にしてもらうことにして、単位は
Fは引張力[N]
aは加速度[m/s^2]
mは質量[kg]
となります。鉄道でよく使う単位はkm/h/sだったり少し違うわけで、単位変換していかないとbveに入力する値は得られないのです。筆者もあまり勉強できるわけではないので最初はここで躓いたのですが、例として
kgをNにするのなら9.8を掛ける、Nをkgにするのなら9.8で割る
加速度m/s^2をkm/h/sにするのなら、3.6を掛ける、km/h/sをm/s^2にするのなら3.6で割る
tをkgにするのなら1000を掛ける
となります。余談ですが、電車の資料を見ていると引張力曲線でkgf/MMなど書かれていることがありますが、MMはメインモーター、すなわち主電動機のことですので、モーター1台あたりということになります。つまり一般的な電車だとモーター1両に4つついていますから、引張力に4と9.8を掛け算すれば、bveの車両性能テーブルに必要な値[N]を求めることができます。
このパラメータは電動車と付随車(モーターの付いていない車両)の重さを[kg]で入力します。
電車の重量は1車両ごとに異なる場合が多いので、電動車が複数車両ある場合はその平均値を入力します。付随車についても同様に考えます
例えば10両編成の電車で4M6Tの編成を組んでいたとします。以下のような組成。
bveに入力する車両重量はkgですが、多くの資料でトン(t)で記述されていることが多いです。ので、最終的に1000倍して[kg]に変換しましょう。
以下のように計算します。計算といっても平均値です。
MotorCarWeightは (34.9+33.4+33.7+34.9)/4=34.225×1000=34225[kg]
TrailerWeightは (25.1+23.3+23.3+23.3+23.3+25.1)/6=23.9×1000=23900[kg]
このパラメータがBVEの中でどのように影響するのかは以下が上げられます。
電車の加速度や減速度全般
加速度や減速度はF=maによって正確に物理演算されます。そのため当然重量を重くしたら加速も減速も鈍くなります。
車体の動揺などの物理シュミレーション全般の挙動
Q.0.5M車ならどうすればいいのか?
A.ケースバイケース
完全にT車の車両があるならTrailerWeightはその重量を入力したら良いでしょう。
編成全車両が電動車で0.5Mの場合は実質的なMT比から逆算してT車重量を求めましょう。
このパラメータがBVEの中でどのように影響する点は具体的には以下が上げられます。
加速度の計算
このパラメータは電車一両分の長さを入力します。
電車一両分といっても、電車は編成を組むことが大多数のため、実際には平均値を入力する事が多いです。電車は、先頭車と中間車で長さが違うことが多いです。なので、
上の例で先頭車が20mで中間車が19mだとすると
(20+19+19+19+19+19+19+19+19+20)÷10= 19.2[m]
CarLength = 19.2となります。
このパラメータがBVEの中でどのように影響するのかは以下が上げられます。
速度制限が解除される場所
電車の速度制限が解除される場所は「制限解除標識を編成全体が抜けきってから」ですが、編成長が長いと、速度が同じの場合は当然長いこと速度制限がかかっていることになります。
勾配や曲線通過時の走行抵抗
電車が同じ速度で走っていて、坂を登りきった場合を考えてみましょう。
先頭車では0‰地点通過(平坦)していたとしても、列車最後尾では、まだ登りきっていません。つまり、後ろに下がる力がかかっていることになりますから、減速させる力が編成全体にかかることになります。
推測ですがbve内部ではMotorCarCountとTrailerCarCountを足して編成両数を算出し、そこにCarLengthを掛け算して編成長の長さを算出していると思われます。
注意しなければならない点が1点あって、平均値を入力しているということは、車両の組成を変更してパラメータを作りたいと考えた場合は、すべての値を変更しなければ厳密なシュミレートはできないということです。
10両編成を6両編成にする場合は
(20+19+19++19+19+20)÷6= 19.333[m]
CarLength = 19.3となりますし、計算は割愛しますが、上の資料の10両編成の場合は中間車のT車かM車のどこかを引っこ抜くことになりますから、当然重量の平均値は変わってきます。厳密なことを考えればこれらも吟味して計算する必要はあります。
しかし、差がわずかと捉えるなら、両数をそのまま変えても問題ないかなと思いますが、ここは個人的な作りたい方針で考えたらいいと思います。一番は車両の詳細な資料を入手できればいいのですが、それも難しいためある程度の妥協も必要かもしれません。
このパラメータは、走行抵抗係数のabcの係数をカンマ区切りで入力します。
と言いましてもどうやって計算するんだ?と思うかもしれませんが、新幹線みたいな流線型の電車を作る以外では、入力の必要はありません。
走行抵抗とは、車軸や軸受の摩擦、レールとフランジの摩擦、空気抵抗をすべてひっくるめて走行抵抗といいます。走行抵抗の走行抵抗の式は日本語で書くと、
編成全体にかかる走行抵抗(N)=係数a×速度^2+係数b×速度+係数c
で計算できます。
係数aは空気抵抗(速度の2乗に比例)bはレールとフランジの摩擦(速度に比例)、cは軸受の摩擦(固定損)です。
それぞれの係数abcの計算方法はbve公式のパラメータ解説ページに乗っていますので、それを参照して実際に上の4M6Tの組成で計算してみましょう。
公式ホームページから引用
"
a = 0.275 + 0.076 × (MotorcarCount + TrailerCount - 1)
b = 0.000242 × MotorcarCount × MotorcarWeight + 0.0000275 × TrailerCount × TrailerWeight
c = 0.0162 × MotorcarCount × MotorcarWeight + 0.00765 × TrailerCount × TrailerWeight
"
ですから、
a = 0.275 + 0.076 × (4 + 6 - 1)
b = 0.000242 × 4× 34225+ 0.0000275 × 6× 23900
c = 0.0162 × 4× 34225+ 0.00765 × 6 × 23900
a=0.959
b=37.0733
c=3314.79
と計算できます。
これを元にして、走行抵抗で電車がどのくらい減速するか計算してみましょう。減速度を求めたいため、F=maを変換し、a=F÷mとします。
慣性係数を吟味して編成全体の重量を求めます。起動時は出発抵抗もあるので、今回は10[km/h]のときと100[km/h]のときの減速度を求めてみます。
編成全体の重量[kg]=34225×1.1×4+23900×1.05×6=301160[kg]
編成全体にかかる走行抵抗(N)=係数a×速度^2+係数b×速度+係数cですから、
10[km/h/s]で走行中の時 0.959×10^2+37.0733×10+3314.79=3781.423[N]
100[km/h/s]で走行中の時 0.959×100^2+37.0733×100+3314.79=16612.12[N]
減速度[km/h/s]は
10[km/h/s]で走行中の時 (3781.423÷301160)×3.6=0.0452[km/h/s]
100[km/h/s]で走行中の時 (16612.12÷301160)×3.6=0.198577[km/h/s]
となります。
つまりは10[km/h]で走行しているときは1秒間に0.05[km/h]ずつ速度が落ち、100[km/h]で走行すれば1秒間に0.2[km/h]ずつ速度が落ちていくという感じになります。
5秒たてば速度が1キロ落ちるので、低速域と高速域では空気抵抗の影響を顕著に受け減速します。
このパラメータがBVEの中でどのように影響する点は具体的には以下が上げられます。
加速度・減速度の計算
そのまま計算式の値が減速度として現れます。また、起動時は出発抵抗もあり、3[km/h]まで影響します。
このパラメータは、曲線抵抗係数のd係数を入力します。
筆者がこのパラメーターを利用したことがないためこのパラメータの説明は割愛します。